大切なもの
いつもは、ムーミンのお話ですが、今回は、パターンを変えて 芳澍での10年分の「大切なもの」 について書いてみようと思います。
でも、やっぱりこの妖精のことから。
ムーミンは、目に見えない仲間の大切さをサプライズプレゼントという形で知りました。だれも自分のお誕生日のことを祝ってくれない、じぶんのことなんか大切じゃないんだと感じていました。
しかし、なかまは、夕方そっと集めていた綺麗なものでムーミンにプレゼントします。ムーミンは目に見えない大切なものを知ります。そして、
「大切なものは目に見えないんだ」
これは星の王子さまの中の誰でも知ってるフレーズです。
みんなのとっては普通の薔薇、でも王子さまにとっては大切な薔薇。 自分自身が、それをどう扱うか、どう見るかで変わる大切なもの。
知っているけどその大切さを実感するのは、それを失った時。
それぞれが大切なものをもっているのに、その大切さに気づかないのかもしれません。
私が芳澍で知った、目に見えない大切なもの。
失ってはじめて、その大きさと多さを知ることになりました。
芳澍にとって温かい、そして熱い思いを惜しみなく降り注いでくださった人。
芳澍で事あるごとに、「なぜそこまでされるのですか?」とその人に伺うと、「すべては学生のためですよ」そのことばの通りにされていた方。教育者としてのご自身を振り返り、心の教育に力を注がれる姿はご自身のことば通りに行動されていた方。
挙げれば限りないほどの心が洗われるようなエピソード
*クリーンエンジェルス (学校周辺の清掃作業)
地域の方に何か学生がお役に立てることをさせていただきたいですね、災害時に、地域の方が芳澍生を頼ってくれるとありがたいですねと始めたクリーンエンジェルス。
その方は、率先して、よれよれのTシャツに着替え、首にタオルを巻き、軍手と小さな草取り用の釜を片手に学生に向かい「おっ、行くぞ」と学校を飛び出して行かれました。
*ある卒業生との会話
お仕事の帰りに学校に立ち寄ったその卒業生は、こんな事を訴えてきました。
卒業生:「お仕事で出会う年配の方の言動が矛盾していて耐えられません。信じられない行動をするんです。」
その人:「いやー、その じいさんは私ですよ。私もそんな人間ですよ。」
卒業生:「いやいや、それはないです。それなら、おじいちゃんだと思ってできますよ。」
その方:「そうですか。そう思ってくれますか。君のような子がそう思ってくれると、嬉しいですね。」
卒業生:「・・・」「自分のおじいちゃんの面倒を、もし誰かが看てくれるとき、自分と同じようなことを想いながらされると嫌ですね。」
その方:「老いる道は、私のいずれ行く道、その老人は、私の姿ですよ。」
卒業生:「私も、いずれ行く道なんですね。おじいちゃんと思って触れ合います。ありがとうございます。」
そばにいたこちらが心を洗われた想いでした。
*新幹線へ猛ダッシュ
どこに行っても、どなたに対しても、変わらない姿勢、列車の時間が迫り駅まで送っていただいたとき、送ってくださった方のお車が見えなくなるまで頭を深々と何度も下げられるその方、せっかく送っていただいたのに新幹線に乗り遅れそう~!
不思議といつも、その後の猛ダッシュで間に合いました。
お荷物を、持とうとすると「レディーにそんなことさせられませんですよ。」と紳士なおことば。
*芳澍生を愛娘のように
電車で、わざわざ声を掛けて席を譲ってくださった青年に、次の駅で席がいくつか空いたとき、その青年に「助かりました。ありがとうございます。さぁーどうぞ、あなたもお座りください。」
その青年は、白髪のその人にとって、好印象の青年だったようで、「あのような青年と芳澍生が巡り逢うと良いですね。」いつも温かく包んでくださっていました。
エピソードは、数多くここに書ききれないほどですが、そろそろ終わらなければ、このブログを11月24日からずーっとホールドしたままでした。
学生に対しても、私たちに対しても、上から指導することはなく、こうしなさいと指示されることもなく、話していると心が洗われるようでした。そんな大切な方、失ってその大きさを実感しています。その方の残された、学生と触れ合う真摯な姿勢と「すべては学生のために」を大切にしていきたい・・・。
今度は、私たちが贈ります。
「忘れないでほしい、芳澍はあなたといることを、
芳澍はあなたとともにあることを・・・」